- 多色の甲比丹
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2016.10.31 Monday
久しぶりにお目にかかりました。それも、ちょっとだけ大きめ、私の持っている甲比丹の中では最大級です。
時代は?18世紀でしょうか。袖の丸みが残っていますから、元は着物か長襦袢に仕立てられていたと思われます。当時も高価だった甲比丹の着物なんてどんな人が身につけたんでしょう?
時代を経て、少し薄くなった箇所もありますが全体的によく手入れされきれいな状態です。大切に扱われてきた裂なんですね。
明るめの地の甲比丹は、縞のインパクトがまた違います。どんなお道具に着せてあげましょうか?想像するだけでも楽しみです。
先日のEテレ「美の壺」は、道具風呂敷がテーマでした。京都のお道具やさんの倉から持ち出され、披露されたお道具の中風呂敷が何と甲比丹でした。前田家伝来もののお道具でした。やはり、道具風呂敷にも甲比丹は使われていたのだとしみじみと眺めたものです。いえいえ、これで風呂敷を作って欲しいなんて・・・そんな勇気は今はありません。
- もう一つの唐木綿
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2016.10.07 Friday
これも、休日出勤の残業中に落札したものですが、「唐木綿の懐中物」と書かれていました。
でも、画像から唐木綿の組織とは違う雰囲気・・・そのためでしょうか、だれも入札しませんでした。ラッキー!多分渡りのビロードだわ!とかすかな期待を持って入札した私です。
予想は的中でした。
角のすれた部分を見ると、ビロードだとすぐに解ります。藍、濃茶、茶、薄茶の4色で縞状にビロードが織られ、その間はまた4色の細縞で構成され、随分手の込んだ仕事をしています。裏には渡りのカイキが付いていました。残念ながらカイキの糸に力はありませんでしたが、作られた時代を想像するには十分な材料でした。これが作られた頃はさぞかしハイカラで高価な懐中物だったことでしょう。
さて、何に使いますかね?
- 唐木綿
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2016.10.06 Thursday
最近ブログに裂の話が少なくなりましたね。お仕事忙しいのですか?とメールを頂ました。
はい、終電帰り、休日出勤などなど忙しくしていましたが、裂を忘れたわけでもありません。残業しながら、ちゃんと?オークションに入札していたりします。
もう一つの理由に、デジカメが壊れたので、裂の画像を撮れないこともありました。
新しいデジカメを買ったのですが、説明書を読む暇がなくて未使用、画像はもっぱらスマホです。
下の画像は残業中に落札したものです。唐木綿というと、普通布地が厚めのものを想像いたしますが、これは珍しく薄めです。使いこなれて薄くなったことも考えられますが、織り糸の構成を見ると、糸がやせた雰囲気はありませから、もともと細糸で繊細に織られた唐木綿だと思います。
藍の色がことさら冴えてきれいです。繊細な手紡ぎの木綿糸で綾に織られています。このような唐木綿も素敵ですね。
- ウロス
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2016.07.21 Thursday
インドネシアのバタク・トバ族に継承される2色の昼夜織にウロスという裂があります。手紡ぎ手織の素朴な織物です。表裏どこにも糸の浮きはありません。ブータンキラーを素朴にしたインドネシア版と言った感じです。
以前に入手した英語の染織の本に今般入手したものにそっくりの一枚布が出ていました。下図の左の大きい方と同じ、中央に経縞、両端にウロス、左右に絣縞の構成で一枚になっています。
竹細工を細い木綿糸でやった、そんな印象です。
作成されたのは、20世紀初頭・・・そのため、状態はとてもよく、古裂のイメージはありません。しかし、今ではこのような手間のかかる染織は当地でもあまり行われていないそうです。
- 渡りの唐桟
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2016.07.14 Thursday
オークションに渡りの紅唐桟が出ていました。参戦するつもりは鼻から押えながら、どのくらい値が上がるのか1週間ずっとウォッチングしていました。探しても入手は困難な品ですから、欲しい人にとって値段は関係なくなるのがオークションですし、進む内に高揚して行くのも事実。最後は倍倍ゲームのようになることもあります。この手のものは業者も参戦して来ます。いくら出しても欲しいというお客様を持つ業者ならば敵なしですから、怖くて自分の身をその場に置くことは出来ません。オークションの間、ずっとそ知らぬ顔でパソコンに向って仕事をしていました。本当は気になるのですが・・・傍観者に徹していました。
糸は縦横双糸、Z撚りです。まさしくこれぞ古渡り紅唐桟なのでしょうね。こんな物がまだ出てくるんですね。
- 細島カピタン裂
- テキスタイルの本
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2016.05.16 Monday「東南アジアのテキスタイル」という本が届きました。ハードカバーの分厚くて重い本です。裂好きの出品者はインドネシアでご自分用に1冊買って、ホテルで読んでみると奥が深いので、もう一冊買って来たのだそうです。(75 US$)
総ページ数は432、すべて英語です。なんと見ごたえのある本でしょう。染織の本は、多く出ていますが写真がメインで説明文がほとんど無いのが普通です。作成された年代も産地も手法すら記されていないことがよくあります。これは違いました。説明文の方が写真より多いのです。
ざっと見ただけですが、技法の説明、渡来の説明、着用の風土など詳細に記されています。最後の画像は、日本にも渡来して有名なインド更紗(裏にVOCの版)ですが、このページを読んだだけでも本の深遠を感じました。時間を掛けて楽しみたい一冊です。
- 島もの
- スマトラの帯
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2016.05.02 Monday今日は、GWの中日の出勤でした。お休みを取っている人が多いかと想像していましたが、朝の通勤電車も普段とあまり変りませんでした。会社でも、約7割の人が出勤していました。さすがに、外からの電話も少なく・・・やっぱり、GWなのねと思ってしまいました。
さて、金糸の帯続きで、スマトラの古い男物の帯地のご紹介です。金糸がふんだんに使われている盛装用の帯だったと思われます。
藍地の部分が帯本体で、茶地の部分が端のボーダーの部分になります。
藍で染められた木綿糸は極細、でも手紡ぎです。金糸も細い撚金糸、四崩模様に金糸を織り込んでいます。
ボーダーの織りがとても面白い。緯糸は茶の双糸、経糸は茶のピン(部分的に双糸)と藍の双糸で残糸織のような表情を見せますが、ちゃんと計算されたピッチの織込みです。緯糸には、間隔をおいて金糸が波状に織り込まれています。素朴さときらびやかさの合唱のような裂です。
これは、いずれ茶入の仕覆に使いたいと思っています。